コトコト日記


マリちゃん(その1)

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伊勢外宮前料理店 cocotte山下 店主です。

まりちゃんは2014年の3月に山下製パン所の製造希望の新人として私達の仲間になった。

線が細くて真面目そうなマリちゃんは、予想通りの頑張り屋さんで、

cocotteに来る時はいつも走って来て、くだらない話もそこそこに走って帰る子だった。

たまにパン屋で見ると、顔面いっぱいの緊張感と、焦りが浮き出ていて、いつも見るたび冷やかした。

頑張り過ぎだよ、気負い過ぎ、良い子ちゃんを演じなくてもいいんだよ〜

と、思ってたっけ…

イジルといつも、反射的にちょっとした攻撃を含めた防御に入り、スルリとかわすマリちゃんは、

なんだか猫っぽいなぁと…捨て猫っぽいなぁと、思った記憶がある。

素のマリちゃんってどんな子なんだろう?
腹を割って話せる同僚はいるのかなぁ…?

って、ちょっと心配だった。

新潟出身のマリちゃんは、たまたま前職の配属が伊勢度会で、たまたま伊勢に来ただけで、同棲してる彼氏以外に、家族も知り合いも居ない様子だったからだ。

そんなマリちゃんが、休みがちになったのは、夏になりかけの頃だった。

最初は、身体がついてけないのかな?と、思っていたけれど、

連絡も無しに休むようになって、ピンときた。

ああ、精神的に参ってるんだな…

って。

ちゃんとした真面目な子だから、普通だったら必ず連絡をくれるはず。

これは、体力の問題よりも深いぞ…

と、思った。

私はcocotteに居るので、パン屋のスタッフ達がどんな顔してどんな思いで働いているのかは、あまり良く知らない。

でも、ちょっとした顔色や声色、返事なんかでなんとなく調子良いか悪いかわかるものだ。

とは言え、パン屋の事にあれこれ言うのも筋が違うなと思っていた。

そんなある日、たまたま休日に入っていたランチboxの仕込みで1人出勤してcocotteに居たら、

マリちゃんがフラリと現れた。

休日にマリちゃんを見たのはその日が初めてだったし、私服を見るのも初めてだった。

”シェフ…チョットだけお話するお時間いただけますか?”

マリちゃんは、あまり元気の無い様子で緊張気味にポツリと言った。

あ、来たな…退職願いだな…

ピンときた。

が、1人での仕事に思いのほか手間取っていた私は、ランチboxの予約時間に間に合いそうも無く…

”このランチboxの引き渡しが終わるまで、チョット待ってて!”

と、マリちゃんを待たせる事にした。

が、1人で頑張っても間に合わなさそうな雲行きになり、

気がつくと、マリちゃんは

”シェフ、何か私に出来ることありますか?”

と、手を洗い始めた。

”じゃあ、これお願い!その後これ!!”

と、ビシバシ仕事を振り、

なんとか納期に間に合わせる事が出来た。

あれが、マリちゃんとの初仕事だった。

その後、ふう〜と一息して、向かい合ってテーブルに着き、

さあ、退職願い聞くか…って腹をくくって聞く姿勢に入った。

が、最終的にはマリちゃんの口から、退職の言葉は出なかった。

その日話した内容は、あまり良く覚えてないけれど、

初めて、マリちゃんが素直に腹を割って話してくれた気がした。

見栄を張らず、意地を張らず、自分でも消化し切れない思いや感情なんかも、言葉を探しながら、1つづつ丁寧に表現してくれた。

私にも昔、似たような経験があったから、そのときのことを思い出しながら、こうしてみたら?とか、あの本読むと良いよ。とか、いろいろ本気で聞けたし、応えることが出来た気がした。

そして、私はマリちゃんに宿題を出した。

休む。働く。辞める。自分で決められるようになったら話しに来て。と。

何日か過ぎ、夏も盛りになった頃、

またまた私が1人で営業していた”暗闇ワインバー”に、マリちゃんが彼氏と来てくれた。

ヒョロっとした頼りなさそうな彼氏は、”ビールください” と、アッケラカンと言って、

緊張感バリバリのマリちゃんを前に、美味そうにビールを飲みながらくつろいでいた。

ひととおりお客様も退いてきたので、マリちゃんのテーブルに行くと、

暫くして、涙をいっぱいに溜めたつぶらな瞳で私の事を見上げて、マリちゃんは退職願いを口にした。

相変わらず彼氏はひょうひょうとくつろいでいる。

チョット彼氏の心理状態を疑ったけど、気にせずマリちゃんの方を見て私は笑顔で言った。

”ちゃんと決められて良かったね”

あの日から、退職を決めるまでの道のりをマリちゃんはその後話してくれた。

小川(彼氏)が毎晩話を聞いてくれた事、小川が私が勧めた同じ本を読んで理解するのを手伝ってくれた事、小川がマリちゃんを養うと言ってくれた事、今日来ることも小川が背中を押してくれた事…

なんだ、小川、いい奴じゃん(笑)

このヒョロっとした三白眼の男が、実は海のように心が広いとマリちゃんは言う。

ふと見ると、小川は相変わらずひょうひょうと、薄ら笑いを浮かべながら、

”マリちゃん、頑張ったね〜”

と、上から目線(三白眼)でマリちゃんを見ていた(笑)


まだまだ続く…(笑)

長文お付き合いありがとうございます^ ^

















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by ise-cocotte | 2016-10-09 22:28 | 日々のこと


小さな料理店店主の日記。
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